あんな。めっちゃ、だいすきです。
辛さとか、苦しさとか、不安とか。
重たい病気を抱えてる人の気持ち、十分わかってる気でおった。
…でも、今。
こうして自分のおかあさんがガンってわかって、その"わかってる"っていうのが、"わかってるつもり"やったことに気付く。
…どっか遠いとこから見てたもんがいきなり目の前につきつけられて、途方にくれてるねん。
そのときふと、マウスを握る指先が動いた。
検索用語の場所に、カーソルを合わせる。
『ガンについて』
入力して、すぐに表示されたリンクをクリックして…
…でもそのページが開かれる前に、パソコン、閉じてしもうた。
ちゃんと見るのは…見てしまうんは、なんか怖くって。
息を吐く。
口にしたコーヒーはもうぬるい。
おかあさんの姿を思い出す。
たくさん。おかあさんのこと、今まで数えきれへんほど見てきたはずやのに。
思い浮かぶのは、あの、おばあちゃんちの玄関から出てきた表情のないおかあさんだけやった。