あんな。めっちゃ、だいすきです。



…はがゆい、なぁ。




水道の蛇口ひねりながら、思った。



はがゆいなぁ。

さんざん頼って。甘えてきて。



…やのにおかあさんが一番つらいときに、なんもできへんかった。



おとうさん、あれからどうしてるんやろか。


おかあさんが入院したら、家のこと全部おとうさんがやらなあかんくなるんよな。


充電器の場所もわからんかったのに。

料理やっていっさいできへんのに。



それにおとうさん、仕事見つけなあかんって。


見つけることできても、仕事に慣れるまでは相当キツイはず。



ほんまのほんまに…ひとりぼっちで、大丈夫なんやろか。













─その日の晩、久しぶりにおかあさんから電話がかかってきた。


電話口のおかーさんの声はいつも通りで。


だいぶ落ち着いてるみたいでホっとする。



…今は家に帰って、おとうさんとふたりで住んでるって。


それから、入院日が来週の半ばに決まったっていう話を聞いた。



「手術は…せえへんの?」

「うん。おかあさんの場合はな、先に抗がん剤治療から始めるんやて」



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