あんな。めっちゃ、だいすきです。


元気のええ声と、カレーのスパイスの匂い。


気をつけしたまま動かんおかあさんの背中をごりごり押して、店ん中に入る。


…うわ、めっちゃ混んでる。忙しそう。



厨房からエプロンで手をふきふき出てきたいっちゃんは、ウチとおかあさんの顔見てにっこり笑った。



「いらっしゃいませ!はじめまして、志波です。向こうの窓側の席座ってください。…今日めっちゃバタバタしててすいません」



おお、いっちゃん制服や。…ってあたりまえやけど。


いっちゃんが制服着て働いとるとこ、はじめて見た。



「あ、いっちゃん。いっちゃんのおすすめのカレー、ふたつください」

「おっ、わかった!すぐ持ってくな」



一番奥の、窓際の特等席。


席につくなりすぐにお手洗いに行ってしもうたおかあさん。


お店はほんま人いっぱいで、次から次にお客さんが来る。


…お昼時のピークと、ちょっとは時間ずらしたつもりやってんけどな。


ため息に似た、小さな息をついた。



…おかあさん、いっちゃんのことどう思ったかなぁ。


なんて言うかな。

気に入ってくれるかなぁ。



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