あんな。めっちゃ、だいすきです。
どうぞごゆっくり、て、もっかいおかあさんに頭下げて厨房に戻っていくいっちゃん。
…すごいな。
忙しさ、居酒屋バイト並ちゃうん。
こんなバタバタなん毎日頑張れるって、さすがもと運動部やなぁ。
さーて、いただきますか。
どっちのカレー食べよかな〜って、机の方に向きなおったら。
「………」
おかあさんが、スプーン両手に持って、すでに両方味見してた。
…二刀流ですか。
どっちかちょうだいよ、おかあさん。
口をもぐもぐさせながら、あかあさんがちょっと不機嫌そうに言う。
「…いっちゃん」
「え?」
「めっちゃかっこいいやんけ」
もぐもぐもぐ。
真っ赤な口紅の唇がせわしなく動く。
「アンタだまされとるんちゃうの」
「〜はい!?」
「だってずるいわ、みとも」
「なにがよ?」
「あんな男前、おかあさんの恋愛遍歴の中におらんかったもん!!」
…いや。ずるい、とか言われても。
「絶対だまされてる。お金貸してって言われたことあるやろ?」
「…ないよ。デートん時はおごってくれるとか、多めに出してくれるし」
「…他に女おるんちゃうの」
「バイト以外はずっと一緒おるもん。携帯も見てええでってゆうてるし」
「ちっ」