あんな。めっちゃ、だいすきです。
いっちゃんと一緒に食べるな、ってうなずいたら、おかあさんが笑った。
ふわって、優しい顔で笑って。
目のとこのシワが、ふわって優しく広がって。
なんか。
…なんか。
もうバイバイやけど、おかあさん電車乗らなアカンけど、なんかめっちゃさみしなってきて。
またね。
元気でね。
入院生活、がんばってな。
どれも全部違う気がして、最後になんて言ったらええんかわからへん。
何が1番ええ言葉なんかって。
…考えても、ええのが全然浮かばんくって。
「…おかあさん」
「なによ?」
「………握手」
ゆっくり、手を差し出す。
おかあさんは目を真ん丸くして、ウチの手のひらを見つめた。
「……ふふ」
「………」
「ふ…あははっ、握手て!!いきなりなんよ〜、みとも!!」
いきなりなに?って、ウチも、自分でもわからへんけど。
…でも。
おかあさんはおっきい声で笑って、腕いっぱいにぶらさがった荷物を置いて。
そんで、両方の手で。
「…みとも、今日はありがとう。」
…ウチの手を、そうっと包んでくれた。