あんな。めっちゃ、だいすきです。





「え〜…卒業生の、みなさん。ご卒業おめでとうございます───」



こっくり。こっくり。



目の前のアヤちんのあたまがさっきからずっと揺れてるねんけど。


…もうええかげん、ここいらでつついたらなアカンかなぁ。


おんなじこと思てるんか、となりで苦笑いしとるさっぺ。



高い位置でまとめて、逆毛も立てて、パールの髪飾りまで埋め込んで。


せっかく髪きれいにしてもろとんのに、そのせいでよけい目立ってるやんか。



壇上のお偉いさんの話はたしかにめっちゃ長いけど…アヤちん。


…学生生活最後の最後で寝たアカンやろ。



前、後ろ、右、後ろ。


アヤちんの首ふりすごすぎて、まわりの子ぉらみんな笑いこらえてるし。



「──校歌斉唱。全員ご起立願います」

「アヤちん!アヤちんって!!」



校歌斉唱、言われてあわててアヤちんつついて起こす。


パイプイスがカタンて鳴る音が重なって、みんないっせいに立ち上がる。



後ろからぶわーって波みたいに送られくる、校歌の演奏。


音が束になって、背中を押す。




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