あんな。めっちゃ、だいすきです。


焦るおとーさんを差し置いて、紙袋の中身を取り出す。



…重たい。


かわいらしいリボンがついた。


ずっしりしたそのまんまるの正体は…果物の、メロンやった。



「えっと……これ、お見舞い用?」



…って、あれ?


なんかこのメロン、汚れて─────






「───────」






そこまで言うて、目を丸くした。


汚れてるんやない。




これ……ぜんぶ文字や。




持ち上げたメロンには、油性マジックでびっしり文字が書かれとった。


メロンてほら、網目みたいになっとるから…文字がいびつな形にゆがんでて。





『お母さん、がんばってな。』



『お父さんは、そばで応援しています。』



『お母さんが元気で帰ってきて、手料理食べれるんを楽しみにしています。』



『お父さんは、お母さんの笑顔が大好きです。』




…全部全部、おかーさんへのメッセージ。




『たまには、優しい言葉もかけてください。』



「…ふっ」



思わず、笑みがこぼれる。


隣のおとーさんはゆでだこみたいに真っ赤になってて。



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