あんな。めっちゃ、だいすきです。
ぴーんこーん。
玄関のしかくいチャイムを押したら、固そうな古そうな音が鳴った。
ぴーんぽーん、やなくて、ぴーんこーん、やねん。
何回聞いても、何十回聞いても、そう聞こえる。
…ウチの、実家のチャイム。
「いらっしゃーいっ!!」
よそゆきの声でドアから出てったのは、ちょっとキレイに化粧したウチのおかあさん。
でもすぐに、おかあさんの顔からスマイルが消える。
「……いっちゃんはどしたん?」
「…どしたんって」
「途中に捨ててきたんか」
「…なんでそーなんの。てゆーか、連れてこんって電話でゆうたやんか!」
…実家に久しぶりに帰ってきた娘にちょっとは目を向けてぇな、おかあさん。
そう。今日から3日間くらい、実家に帰ることになった。
来週から最後の看護実習が始まって忙しくなってまうから、その前にって。
ついでに彼氏も連れてきぃ!って電話でおかあさんから言われててんけど。
やけに白いおかあさんの顔チラ見して、ため息つく。