月光歌
「なぁ、梓」
「はいっっっ!」
あっ声裏がえったっ
恥ずかしい!
顔を押さえていたら…
「いくぞっ!」
「えっ…どこに?」
「さっき親父に渡された袋だけど、隣のホテルのカギが入ってる。そこしか行くとこねぇから行くぞ。」
「えっ…あぁ、はい。」
あまりの冷静さに一気に私も冷静になってしまった。
料亭を出てホテルまで少し歩く。
なんだろう…この違和感………
あ!
「喋り方!あなたそんな性格じゃなかったわよね!?さっきまで!」
「ああ?わりぃかよ。ああいう場ではきちんとするだろ普通。こっちが素だよ。お前もそうだろ?」
あ…そうか。
それはそうなりますよね…。
「そっか…。そうですね。」
納得した風に言うと…
「さっきまでの俺のが好みか?」
なんて、少し寂しそうにしてあなたが聞くから…
少し気になってしまった。
「いえ?だって場を考えて喋ってただけでしょ?それにどっちだって大した差はないですよ。」
「なんでそう思うんだ?」
「だって今が本当の大和さんだと言いますが、もしさっきのが本当の大和さんであったとしても、どっちにしろ大和さんでじゃないですか。」