シュガーズ
「見に来てよ」
秦野君が言う
「何を?」
「試合」
並んで歩く帰り道
2人とも自転車を押して歩く
試合
野球の試合……だよね?
曖昧な反応しかできないあたしを見かねて
秦野君が言う
「知永に見てもらえるのも最後になるから」
「最後?」
「お願いだから来てよ」
゙最後"の言葉が引っかかる
2年生の1学期末
あたしたちの学年が引退するのは3年生の春
どう考えたって最後になるはずなんかないのに
なんでそんなこと言うの?
「困った顔になってるね」
黙るあたしを見て秦野君が小さく笑う
「知永 俺ね」
「……うん」
「部活やめる」
「え?」
自分の耳を疑う
「……なんで?」
信じられない
授業中は屋上で寝て
放課もたいてい寝てて
学校に部活だけしにきてるような秦野君が
野球やめちゃうの?
「イヤだから」
「イヤって?」
「ハルと比べられるのが嫌だから」
「………。」
真剣な顔の秦野君
「知永がいればそれでいい」
ハル君とあんなに仲良しなのに……
いきなりなんでそんなこと言うの?
「お前だけでいい」