シュガーズ
あたしが自動販売機から戻ったときには
アップが終わってもう試合が始まっていた
「衣都ちゃん 遅かったね」
「ごめんねっ」
少し考え事してたら遅くなっちゃった
手には炭酸飲料を3本分
眞子の分はフタを開けてから差し出す
「ありがとお 衣都姉」
「はい 芽依ちゃんも」
「え?あ……わざわざありがとねっ」
芽依ちゃんが笑う
お礼を言うのはこっちのほう
部活で応援とかじゃないのにわざわざついてきてくれたんだもん
彼氏が野球部なわけでもないのに……
「あっ ハル兄ちゃんだ!!」
ピッチャー ハル君
眞子が大きく手を振る
いつもよりもずっとずっと真面目な表情な彼
キャッチャー 秦野君
この角度からだと表情はよく見えない
何を考えてるかも……よくわからない
秦野君がサインを送る
大きく振りかぶってハル君が投球する
素人のあたしから見てもわかる
2人の息はぴったりだった
「………かっこいい」
思わず口から漏れる言葉
言ってから恥ずかしくなって芽依ちゃんと眞子の様子を伺う
2人とも試合に夢中であたしの言葉には気づいてないみたい