シュガーズ
ポケットで震える携帯を取り出す
目の前が霞んでよく文字が見えない
電話……出なくちゃ
あたしは携帯を耳元に当てた
「………もしもし」
『衣都 下 見てみ』
「え?」
声
ハル君?
あたしは窓から下を見下ろす
「………。」
『3階だし たぶん大怪我するよ』
黙り込むあたしの耳にカレの声が響く
前と似た台詞
だけど笑ってはなかった
なんで?
なんであなたはあたしが1番会いたいときに来てくれるんだろう
どうしようもなくつらいときに来てくれるんだろう
いまさっき飛び降りれば楽になれるって思った
自分から自分の人生をおりようと思った
『今の笑うとこだよね?』
心配そうな声
こんなあたしを心配してくれる人がいるの?
『俺 衣都のこと守りたいんだ』
あたしの目にハル君が小さくうつる
遠すぎて表情はよくわからないけどカレの声は小さく震えていた
『言ったじゃん ちゃんと受け止めるよって 覚えてる?』
覚えてるよ
ハル君の台詞
行動も笑顔も全部
『俺ね』
「………。」
『衣都のこと』
あの時は先のことなんてわからなかった