シュガーズ


「…………。」

「お願い……稚空君」

「ヤダ」


涙目になっている横江に言う


「何があったか知らないけど 1人にさせれるかよ」

「………。」

「知永が弱いこと 俺はよく知ってる」

「203号室」


そう言ったのは知永の知り合いらしい女の人


「衣都ちゃんのこと よろしくね」

「………はい」


俯く横江の隣を通り抜けてエレベーターに向かう


1人になることを選ぶやつには理由がある

はじめから孤独が好きな人間なんていない

愛されたくて 傷を負う

俺も同じだからよくわかるんだ


1人でいるのがどんなにつらいか

どれだけ愛情に飢えてるか

だから支えてあげないといけない

見た目より繊細で 壊れやすい彼女のこと


203号室の前

ドアが少し開いていて窓のそばで携帯に耳をあてる知永の背中が見える



「あたし………」


一歩踏み出して足が止まる

電話

震えながら 声を枯らしながら知永が話す



「………ハル君が好き」


゙ハル"

その名詞に身体が強張る

どうして?


「好き……好きなの……」



彼女の声が胸に刺さる

俺はその場から一歩も動けなかった


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