シュガーズ

゙新田(ニッタ)さん"

そう名乗る女性から電話がかかってきた

『病院に来てください』


慌てて教室を飛び出していった横江

その後を追いかけていった稚空

モヤモヤした状態で教室にいるときの電話だった


………なんで俺にかけてきたんだろ


『前に衣都ちゃんの家の前にいた子よね?』


黙る俺に新田さんは続ける


『あなたにしか……衣都ちゃんのこと救えないと思うの』

「………わかりました」


思わず

頷いてしまった

考えるよりも先に足が病院へと向かっていた

きっかけが欲しかった

衣都に会いに行く理由が欲しかったんだと思う



衣都は泣いていた

泣きながら 俺に「好き」って言った

その時に思ったんだ


友達としてでもいい
人としてでいい

衣都が俺を好きでいてくれるならなんだっていい

すぐにでも衣都のそばに駆け寄りたくて

真っ赤になってる衣都の顔を近くで見たくて

強く強く抱きしめてあげたかった


だけど できなかった

稚空の彼女だから

衣都のことが大事なのと同じくらい大切な友達

稚空の彼女じゃなかったら奪っていくことだってできるのに


いつからこんなに臆病になったんだろう

< 264 / 287 >

この作品をシェア

pagetop