シュガーズ
「澪梨ぃ どした?」
りっちゃんの声
「………何が?」
「いや 超怖い顔になってたよ」
「別にだよぅ」
あんたにだけは言われたくない
つけまつげ何枚つけるの?
アイラインどれだけひくの?
ファンデどれだけ塗りたくるの?
怖いのはあたしじゃなくて
りっちゃんの化粧姿だよ
あんたの顔
「澪梨ちゃんはナチュラルメイクだよね」
「うん」
「可愛いからいいなァ」
りっちゃんの横で同じく朝からメイク中の詩ちゃんが言った
「澪梨は元が違うよ~」
りっちゃんの言葉
悪気はないってわかってる
゙元が違う"
嫌味なんかじゃない
普通の
単なる誉め言葉だってわかってる
今までだってそうだったじゃん
「そんなことないよ」
精一杯の笑顔をつくる
「ただ化粧が苦手なだけ」
順調なの
今を壊されたくない
『あんたさ 何が怖いの?』
黙って
『何に怯えてそんなことしてんの?』
黙れよ
秦野 稚空
あんたにあたしのことなんかわかんない
過去も苦労も葛藤も
あんたなんかにわかられてたまるか