プロトコイル
第一章~
うちの家系は、室町時代から代々続く、由緒ある百姓の一族だ。

そんなエリートの家系だが、俺は札付きのワルだ。
今まで一度だって年貢を納めたことがない。二毛作なんてクソ食らえだぜ。

得意のピンポンダッシュは、誰にも負けない自信がある。

好きな雑誌は『投稿写真塾』
俺は、ちょいエロなんだぜ。

でも、村一番のピュアな所もあるのさ。
なんせ、振り込め詐偽には、通算五回も引っ掛かったほどのお人好しさ。




コンコン、コンコン、突然何かがドアを叩く音が聞こえる。

この音は、キツツキではないか、それもクマゲラの音。

そんな閃きと同時に、ドアが開く。


クマゲラなんかじゃないんじゃない。
右手に、チラシを握り締めた。白人の男だ。

「なんだ。スミス大佐じゃないか、そんな白い顔をして、
一体全体、どうしたんだい。」


スミス大佐は、うちの下宿人で脱走兵だ。

浜辺で寂しそうに砂を数えている姿を見かね、
うちの親父が居候として連れてきた。


海軍仕込みの、シーフードカレーを作る以外は、全く能がない。

彼の、いつも半開きのチャックを見ると軽くイラつく。
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