先輩と私。

「諦めるしかないね…」


ミサはそう言って、ため息をつく。



「…欲しいなぁ。 あっ、バイトとかは!?」


私は提案してみるけど、



「ばかっ。 中学生がバイトなんでできるワケないでしょ? それにうちの学校はバイトなんて禁止だし…。 まぁ桜なら背も高いし、高校生に見えないこともないけど…」



うちの学校は確かにバイト禁止。


拓はバイトしてるってこの前チラッと言ってたから、学校には隠してるんだろうな…。



「私、高校生に見えるかな?」


ミサの言葉に反応し、私は手ぐしでさっと髪を整える。



「うーん。 化粧とかしたら、大丈夫なんじゃない?」


「私、バイトしよっかな…」



拓と同じトコで働きたいってのもあるし、


ワンピース着て、拓にもっと可愛く見られたい。



「決めた! 私バイトするっ」



小声で話してたのもすっかり忘れて、


大声で思い切り叫んでしまった。



クラスの皆の視線がいっせいに私に集中する。


「あ…」


「ばか桜っ。 声デカすぎ!」


「はは~、今のは冗談冗談! みんな驚いたぁ?」


なんとかごまかせた…かな。



私、頑張ってアルバイトするんだ…。


もっと拓先輩に似合う女の子になりたい…。


もっと好きになってもらいたい…。


女の子なら、普通だよね?
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