先輩と私。


「……」



何も反応しない。


相手は桜の木の丁度真下で寝ている。


影で顔も見えないけど…、


寝てるの?


そっと顔を覗き込んでみる。


綺麗な寝顔だ…。



そこには、高等部の制服を着た1人の男子生徒が、


静かに寝息をたてながら寝ていた。



いつもはいないのに…。


そんなことを思いながら、私は男子生徒が寝ている真横にちょこんと座ってみた。


特に意味はない。


春の太陽が少し暑く感じて、影の中に入って涼む、みたいな。


男子生徒に興味なんてない。


だけどなぜか見つめてしまう。





「…んー」



その時、私の視線を感じたのか、


横にいた男子生徒の目が覚めた。



「えっ」



私は思わず声をあげる。


…ど、どうすれば。



「誰だ?」


「えっと…。 中等部の3年、山本です」



“桜”は言わなかった。


何回も言ってるけど、ありがちな名前で好きじゃない。


それに“山本”って苗字もありがちだから、


更に名前が浮いちゃうような気がして。



「山本さん? へぇ…。 俺は遠藤です。 よろしく」



そう言って、遠藤先輩は私に手を差し出す。


私はその手を黙って握った。


不思議な感覚だ。


裏庭で、こんな出会いがあるなんて…。



しかし遠藤先輩はすぐにまた芝生の上で大の字になる。



「あの…。 お昼ごはんは…?」


「あぁ。 俺面倒だから持ってこないんだ。 そのせいでいつもお腹すいてる」


「だったら、一緒にどうですか?…」



迷惑だったかな…?


まじまじと私の顔を見る。


やっぱり…、ダメかな?



「いいの!? マジで!?」


「も、もちろんですっ」


よかった~。


今日はたまたまいつもより大きいし。


まるで母さんが、このコトを予測していたかのようだ。
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