美男子症候群!?
あたしはさりげなく3メートルぎりぎりの距離をあけて、拓海くんの顔を見上げた。
いつも通りの、かっこいい顔。
でもその顔からは、表情が消えていた。
ダルそうな顔でもなくて、眠たそうな顔でもなくて。
イジワルそうな黒い笑顔でもなくて。
なにを考えているのか、ちっともわからない顔。
「どうしたの、拓海くん」
「……大事な話ってのは、陸斗のことじゃない」
「え。ちがうの?」
えー、そうなの?
あたしかん違いして、もう話は終わったもんだと思ったから、すっかり気がゆるんでたよ。
ぴしりと姿勢を正して、あたしは真っ直ぐ拓海くんと向かい合った。
「じゃあ、大事な話ってなに?」
「……大事っつっても、もう何回も言ってることだけどな」
ぼそりとそう言って、拓海くんが距離をつめてきたから、あわてて下を向く。