キミはいつも意味を持たない
・へりくつ

藍色の空は一日の終わりを告げると共に、一層冷えた空気を送り込む。


「うう、寒い」


効き過ぎなくらい暖房で暖められたオフィスから出た後の、外気との温度差は本当に堪える。

マフラーを忘れた今日なんかは、特に辛い。

背中をきゅっと丸めて帰路を急いでいると。


「あの、すみません」


背後からの声に振り返って見ると、そこに居たのは幼さの残る顔つきに学生服を着た男の子。

見ただけで分かる。
高校生。

高校生に知り合いなんか居ない。

だけど何となく、顔は見覚えがあるような気がして、あたしは記憶の中の知人フォルダを開けてみる。

ひょろりと背が高くて、赤みがかった茶髪。大きすぎない涼しげな目元。

だけど誰とも一致しない。
知り合いの弟とかその辺かしら。

うーん、分からない。

< 1 / 74 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop