キミはいつも意味を持たない

「違いますよ。ホントに付き合いたいと思ってるんです」

「でも……」

「だって俺はあなたの事をよく知らないし、あなたも俺をよく知らないでしょ?」


彼はあたしの言葉を遮って少し強めにそう続けた。


「だから知り合いたいと思ったんです」


彼の言いたいことは、まぁ分かる。

お互いを知る事は確かに大事だもの。

だけど。


「でもそれならいきなり付き合わなくたって良いじゃない」


よく言う“お友達から”ってやつで、十分に知り合うことは出来る。

別に付き合う必要なんかない。

すると彼はにんまりと笑い、自信満々に言った。


「だってちんたらしてる間に他の男に盗られたらヤダもん」


裏表のない無邪気な笑顔の彼を見て、あたしはぽかんとしてしまった。

盗られる前にツバ付けとこうってわけか。
なるほど、なんて感心してる場合じゃない。
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