キミはいつも意味を持たない
「智子さーん!」
相も変わらず大声であたしを呼ぶ彼に、あたしはがっくりとうなだれた。
「だから、それやめてってば」
「ごめんなさい。嬉しくてつい」
彼はちっとも悪気なんかない顔でニコニコしている。
あたしはこっそりため息をついた。
「まぁいいわ。で、何するの?」
「え?」
「だから、今から何するの?」
わざわざ仕事終わりに待ち合わせをしたんだから、きっとデートなんだと思った。
だけど彼はキョトンとしている。
「すみません。考えてません」
また、ちっとも悪気のない顔でそう言った。
さすがに今度は大きくため息をついてしまう。
「何のために待ち合わせたわけ?」
「え、会うためでしょ?」
なんだそれ。
じゃあ目的は果たされたって訳?
あたし、ホントに早まっちゃったかもしれない。