キミはいつも意味を持たない
「ちょっ、智子さん!?」
顔を真っ赤にして動揺する彼を見て、あたしは少し楽しい気持ちになった。
「ごめんね、みんな。これからあたしんちに行くの。行きましょ、空人」
あたしはそのまま彼の腕を引いて高校生達の間をすり抜けた。
ヒューヒュー、なんて若者らしからぬ冷やかしを背に受け、角を曲がった所で手を離した。
「智子さん、どうしたんですか?」
「何が」
「今なんか変だったでしょ」
まだ顔の赤い彼を冷やかすように、あたしはニッと笑った。
「ちょっと、からかっちゃった」
「え? そうなの?」
「それに、正直ちょっと鬱陶しくて。早くあの場から去りたかったのよ」
あたしは少し面倒臭くなりながら、投げるように言った。