キミはいつも意味を持たない

次の日から、彼からのメールが爆発的に増えた。

メールの差出人に名前が表記されるから、名前を頻繁に視界に入れようとしてるんだろうけど。

電話も増えた。
メールが増えたのと同じ理由だと思う。

浅はかだな、と思う。
単純だとも。

だけどその単純さが、なんとなく可愛かったりもする。

可愛さを武器にする男なんて、なんだかズルイ。

あたしは抗うようにわざとメールの中でも電話でも“キミ”を強調する。

その度に悔しがる彼とのやり取りが、ちょっと、ほんのちょっとだけど、楽しい。

かわしてもかわしても、尻尾振ってくっついてくる彼がやっぱり可愛く思えて。


『ねぇ、今日オムライスが食べたいな』


こんな彼のメールにも、ついつい了解のメールを返してしまう。

甘やかしてるのかな、あたし。
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