キミはいつも意味を持たない
・プライド

「本当の彼氏には昇格しそうなわけ?」


そう聞かれて隣を向くと、いつもみたいにからかうような目じゃなくて、ごく真剣な目で由美がこちらを見ていた。

あたしはキーボードを打ち続けた手を労うようにぐっと伸ばす。


「可愛いな、とは思うんだけどね」

「へえ」


人懐っこい子犬みたいな彼は、本当に可愛い。

だけどやっぱり、若すぎる。


「でも可愛いだけじゃダメよ。どうしたって、オトコじゃなくてコドモに見えちゃうもの」


デスクの隅に置きっぱなしですっかり冷めたコーヒーをすする。

その拍子に脇に積んであった資料の冊子が落ちた。


「あっ、しまった」


拾い上げようと、椅子に座ったまま身体を折り曲げる。

すると、頭上からぽとりと由美の声が落ちてきた。


「コドモ扱いされる悔しさ、智子は知ってるんじゃなかった?」

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