キミはいつも意味を持たない

その言葉に反応して、思わずパッと顔をあげる。

諭すような由美の視線に、あたしのそれがぶつかる。


「堀川さんの時に、智子は十分に経験したじゃない」


あたしはしばらく黙った。
由美は視線を外さない。

いよいよ空気がわずかに重みを増し始めた時、由美はふっと表情を緩めた。


「……地雷?」


少しおどけてそう言う由美に、一つため息を吐いて「まあね」と返した。

由美はそれに対してカラリと笑う。


「わざとだけどね」

「命知らずね」


由美がデスクに向き直ったので、あたしも拾い上げた資料を軽くはたいてパソコンに向かった。


由美の言う堀川さんとは、あたしの元彼。

元彼とは言えないような淡泊な関係だったけど、あたしは彼を大好きだった。

彼はあたしより10歳年上だった。
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