キミはいつも意味を持たない

あたしの脳内の映像で、ぴったりと彼の顔にピントが合った。


「“おかえりなさい”の子ね」

「アハハ、そうです。それです」


あたしが仕事帰りによく立ち寄るコンビニ。

最近会計の時に「おかえりなさい」を言ってくれるレジの店員さんが居た。

それが彼だ。

そしてその彼が、あたしに付き合ってくれと言った。

まだ少し混乱するけど、状況はようやく理解できた感じ。


「でもね、あたしはキミよりずいぶん年上なのよ?」

「ずいぶんって」


彼はそのフレーズが気に入ったのか、少し笑った。
笑うとさらに幼くて、かわいいなって、思った。


「関係ないです。結婚してないんですよね?」

「してないけど……」


あたしがそう答えると、彼は真っ直ぐにあたしを見つめた。


「まずは、お試しでも良いよ?」


そう言って、またコドモっぽく笑った。
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