キミはいつも意味を持たない

彼はウェイトレスが運んできたコーヒーを、ブラックのまま一口飲む。


「そんなことないよ」


コト、と静かにカップを置くと、彼はふわりと微笑んでみせた。


「たまたまコーラよりもコーヒーが好きなだけ。漫画も含めて本が好きなだけ。それだけだよ」


ニコニコと嫌みのない笑顔に、あたしは照らされた。

ただ好きなだけ、か。

それを何かの基準にすることなんて、微塵も考えていないみたい。


「実際は、どうなの?」

「オトナかコドモかって?」


あたしはこくんと頷く。

彼は少し考えた後、コドモみたいな無邪気な笑顔を向けた。


「分からない。俺自身はどっちでも良いんだけどね」


どちらでも良いなんて予想外の答えに、あたしは思わず吹き出した。
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