キミはいつも意味を持たない
そんなあたしの様子に空人はごまかすように笑って見せたけど、それはわずかに自嘲的で。
「ごめん。困らせちゃったね」
あたしはブンブンと首を振って否定した。
そんな、泣きそうな顔しないでよ。
あんたはいつだって犬っころみたいに、人懐っこい笑顔であたしを見てたじゃない。
「ねぇ、智子さん」
「なに……?」
空人は口元だけ無理矢理引いて、笑顔を作った。
「本気の恋って、しんどいもんだね」
そう言った空人の笑顔からはいつものキラキラした眩しさは感じられず。
「空人っ」
「ごめんね。今日は帰る」
あたしの呼び止めを振り払うみたいに、空人は駆け出した。
あたしのマンションとは違う方向へ。