キミはいつも意味を持たない
あたしは空人の走り去った方をしばらく見つめていた。
もう辺りは藍色の空が滲み始めていて、なんだか寂しい気持ちになる。
空人はもうあたしの所へは来ないかもしれない。
元々はそうなることを望んでいたはずなのに、あたしの胸はチクリと痛んだ。
あたしはぐっと下唇を噛み締めて、重い足に力を込めた。
そして歩きはじめる。
空人が去った方向に背を向けて。
それから数日が経っても、空人からの連絡はなかった。
毎日うんざりするくらい送られていたメールもなく、着信もない。
少し楽しみになっていた「おかえり」が聞けないことに、あたしは物足りなさを感じずに居られなかった。
自然と空人が離れていく。最初はこれが理想的な終わり方だと思ってたのに。
「これで終わりなわけ?」
あたしは薄暗い部屋で、そう独りごちた。