キミはいつも意味を持たない
辺りはしっとりとした夜が染み渡り始めている。
ともされた街灯の光で照らされる空人の顔は、やっぱり少しオトナびていて。
どうしてだろう。
このままずっとこの腕の中に居たいって、そう思った。
ふと空人が一瞬視線を外す。
再びこちらに戻した時にはどこか艶やかなそれに変わっていた。
「そら……」
名を呼んでみようと開いた口は、温かく柔らかい何かですぐにふさがれた。
羽根を落とすように、ふわりと優しい感覚。
胸の奥が、きゅっと鳴いた。
間近に空人の整った顔がある。
大きすぎないその目が閉じられたのを見て、あたしもそっと目を閉じた。
一分か、あるいはそれ以下の短い時間。
重なるだけのキスだったけれど、あたしの中のわずかな迷いを拭い去るには十分だった。