キミはいつも意味を持たない
・キミのことば
それから丸一年が経ち、厳しい冬が去った。
そうして気づけばもう、桜色が街を彩る季節になっていた。
「なに、智子。今日はやけに張り切ってるじゃない」
出社してからデスクにかじりつきっぱなしのあたしに、由美は怪訝な瞳で言う。
「今日は残業するわけにいかないのよ」
あたしは由美の方を振り返ることもなく答える。
その間もあたしはキーボードを叩く指を止めない。
「なんか怖いよ、あんた」
あたしはそんな由美の言葉にも構うことなく仕事を続ける。
集中して、仕事をしているようにも見えるだろうけど。
本当は思考が色んなところに飛んじゃって仕方ない。
思考が脱線するたびに、あたしは頭を振って道筋を立て直す。
キーボードを叩く指に汗が滲む。
今日が約束の日。
空人の卒業式だ。