キミはいつも意味を持たない

仕事を終えるなり、あたしは同僚に挨拶することももどかしくオフィスを出た。

柔らかく吹く風が、夕暮れの中に桜の花びらを散らす。


「……覚悟しててよ」


あたしはぽつりとこぼし、道を急いだ。

早く、早く。

あいつとの賭けを終えるんだ、今日。

楽しみなようで、不安な気持ち。


帰宅後キッチンにこもって夢中で準備した料理は、気付けばあいつが喜んで食べてたものばかり。

胸の奥がむずがゆい。


この賭けの間、あたし達は一度も会わなかった。

定期的に連絡は取っていたけれど、ケジメをつけるために離れていたんだ。


あたしは一年、聞き分けの良い子供みたいにキミだけを待ち続けたんだから。

キミだってそうじゃなきゃ、許さないんだから。
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