キミはいつも意味を持たない
ピンポーン。
部屋に鳴り響く、決戦の合図。
ううん、違う。
あれは祝福の鐘。
だってそういう約束だったから。
「久しぶり、だね」
気持ちが変わっていなければ、つまり賭けに勝ったなら。
卒業式の日にうちを訪ねて来るって。
玄関を開けたそこに居たのは、制服姿の男の子。
見ただけで分かる、高校生。
「空人っ!」
「会いたかったよ、智子さん」
沸き上がってくる愛しさと、溢れ出した喜び。
大きく広げられたその腕の中に思わず飛び込む。
「キミの、勝ちだね」
「だからそう言ったでしょ?」
相変わらず自信に満ちた瞳で、変わらない人懐っこい笑顔で。
あたしはそれが嬉しくて、緩む口元を隠せなかった。