押しかけ×執事
 気がつくと、お葬式は終わっていた。

 あたしの手には、小さな骨壷が入った箱がひとつ。

 綺麗な刺繍の入った白いカバーに覆われているそれを抱いて、夕暮れの部屋に戻っていた。

 ことん、とそれをテーブルの上に置き、座る。

 お母さんと2人で住んでいた、4畳の小さな和室が2つ続きであるだけの2Kのアパート。

 襖で仕切られた奥があたしの部屋になっていて、手前が食事スペース兼お母さんの部屋に、小さい台所と玄関がある。

 奥の部屋を一緒に使おうって言ったけど、あたしのための部屋を作ってあげたいっていうお母さんの言葉で、奥の部屋をあたしの部屋にしてくれた。

 本当は、帰りが遅いお母さんがあたしを起こさないように気を使ってくれているんだと知ったのは――中学に入ったあとのこと。

 小さな折りたたみテーブルの上に置いた、母さんの骨壷と向き合う。

「……」

 お葬式のために着ていた学校のセーラー服の上に、ぽつん、と涙が1つこぼれる。

 あぁ――あたしと血の繋がった人がいなくなった……

 そう思うと、胸が締め付けられるように痛み、言いようのない不安と悲しみに襲われる。

 この世の中で、あたしはたった独り――……

 独りぼっちに、なったんだ……
< 22 / 39 >

この作品をシェア

pagetop