押しかけ×執事
「……」

 気がついたときには、部屋の奥の窓から日が差している。

 勉強机と小さなタンス、それに3段ボックスの本棚が1つだけの部屋。

 ここだけを見ると、今までと何も変わらない。

 けれど、その胸に抱いたままだったお母さんの骨壷を入れた箱が、あたしの心に影を1つ落とす。

 のろのろと起き上がり、立ち上がってとりあえずお母さんを机の上に置く。

 ふ――と、両手を上に伸ばして背伸びをしてから、ゆっくりと襖に手をかける。

 お兄さんたち……帰ったよね。

 昨日、あんなことを言ったけど……今日、お迎えが来るだろうから、それまでに色々と準備しなきゃいけないと思う。

 ここに居たいけど……あたしのバイトでなんとかなるのかな……?

「……」

 色々考えたあと、とりあえずお母さんにお水を供えなきゃと思い、様々なことを思いつつも、あたしは台所に向かうために襖に手を伸ばす。

 誰も居ない――そう思い、ごく普通に開ける。

 けど。

「――っ?」

 襖を開けたままの姿で、あたしは思わず硬直していた。
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