押しかけ×執事
「あぁ――さつきちゃん……」

 あたしを見つけると、お兄さんは優しく微笑み、そして背伸び。

「んー……」

 ひとしきり背伸びをしたあと、お兄さんはゆっくりと上半身を起こして胡坐で座った。

「ごめんね、勝手に寝かせてもらったよ」

「あ……いえ……」

 どう答えていいのか分からず、あたしは戸惑いながらも視線を逸らして答えると、そのまま台所に向かい、小さな食器棚からカップを取り出して蛇口からお水を注ぐ。

 色とりどりの大きさが様々な星がたくさん描かれたマグカップは、お母さんが愛用していたもの。

 それに水を注いだあと、あたしはカップを持って部屋に戻り、机の上に置いていたお母さんの前にそっとカップを置いた。

「……」

 そっと手を合わせる。

 何か心の中で話さなきゃ、と思ったのに……何も考えられなかった。

 そっと目を開けると、ふわりと右側に気配を感じる。

「……」

 少し右を向くと、お兄さんがあたしの隣に立ち、目を閉じてお母さんに向かってそっと手を合わせていた。
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