すっぱちゃっぷす☆

その時

背後から借り物競争の召集の笛の音がした。


「あ、ン…私行かなきゃ…」


借り物競争に出場する美川さんは名残惜しげに愛人を見つめる。


「ほら、行けって」


「ん…」


なぜか小指の爪を色っぽく噛む美川さんは


愛人に促されようやく入場門へと走って行ったのだった。




二人きりになり


私と愛人に少し気まずい空気が流れた。


「お前も行けよ」


「え…、でも愛人は…?」


「俺はちょっと飲み物買いに…」


そう行って愛人が歩き出そうとした瞬間



「ッ……」


愛人が一瞬――…


ほんの一瞬だけ顔をしかめた。


「ま…愛人…!やっぱり…」


私は思わず愛人に駆け寄り、その足を見ようとした。


しかし、


「いいって言ってんだろ!」


愛人は私の前に手を出すと、私が近付くことを拒んだ。


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