落下するリズム
rhythm1.戸惑い
漆黒の夜空を、駆け上っていく白い影。
音もなく、頂点に上り詰めたそれは、ほんの一瞬、息を止めるみたいに静止した後、鮮やかなオレンジ色の、光の花を咲かせた。
地響きにも似た、ドンッという音が、数秒遅れて、コンクリートの壁を揺らす。
こんな光景、もう、何度も見てきた。
綺麗だなぁとは思うけど、今さら花火なんて、珍しくもなんともない。
浴衣を着たいと思ったのも、20歳までかな。
…どうせ高瀬さんとは行けないもんね…
胸の奥でそう呟いたのは、強がりなんかじゃない。