オレンジの彼。
健吾☆side〜
「ただいま」
玄関を開けると、母さんが走って来た。
なんかあるな。
俺は反射的にそう思った。
「健吾、今日は沙由里んとこでご飯食べに行くわよ!!」
「は?」
「ほらほら~、早く準備しなさい」
沙由里さんというのは、しぃの母さん。
高校時代からの親友らしい。
「ったく。分かったよ」
楽しそうな母さんをみて、嫌とは言えなかった。
俺は、急いで準備した。
って言っても、荷物を部屋に置きに行っただけだけど。
俺も行きたくないわけでも、行きたいわけでもない。
ただ沙由里さんの家に行けば、必ずしぃがいる。
会いたいけど、姿を見たいけど。
会いたくない。
そんな想いを持ちながら、隣の家へと向かった。