オレンジの彼。
母さんが、楽しそうに鼻歌を歌っている。
チャイムを鳴らすと、
「はーい」
中から沙由里さんが出てきた。
「いらっしゃい~。どうぞ中へ入って」
「お邪魔しまーす」
母さんに続いて俺もしぃの家に入った。
「ご馳走になって悪いわね」
「全然いいのよ。今度、真智子んとこにも行かせてよね」
「もちろん。いつでも来てよね。しぃちゃんも連れてきてよね♪」
母さんたちの話をぼーっとしながら聞く。
「そうそう、しぃといえばね♪」
楽しそうに笑うしぃの母さん。
「今、ボーイフレンドを連れてきてんのよ♪」
は?
ボーイフレンド?
「嘘~?しぃちゃんが?!」
「そうなのよ♪結構かっこいい子なのよ」
しぃの…彼氏?
あいつ好きな奴いたのか…?
「早く見たいわ~。」
「中にいるから行きましょ」
母さん達が、リビングへと急ぐ。
俺は驚いて、一歩も動けなかった。
「健吾~!?何してんの??」
「あ…今行く」
母さんの声に、動かない足を無理やり動かした。