オレンジの彼。


はあっとため息混じりに不満を漏らす。


「なーんで、奈々にはあんな素直なの?扱い方が違いすぎるでしょ…」


「そんなことないよ…奈々からしたら、詩織ちゃんが羨ましい…」

奈々は悲しそうに、朔斗の席を見ながら呟いた。

とても小さな声で…。




「帰ろっか」

さっきとはコロっと表情が変わり、元気ないつもの奈々に戻った。


「うん、」

カバンを持って非常階段の方から中庭へ向かった。


中庭からは、体育館が見える。
体育館から元気のよい声と、ボールの弾む音が聞こえる。


無意識に、あたしは健ちゃんの姿を探す。

健ちゃん、
何処にいるのかな…?


「きゃーーー!!」「かっこいい!!」「こっち向いて」

女子の黄色い声援が聞こえてくる。


「うるさっ…」
奈々が迷惑そうに眉を細めた。



あっ!!居た!!


女子達の間を面倒くさそうに通る健ちゃん。



あたしの…


好きな人。






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