オレンジの彼。


あっ…!


「健ちゃん、はい!」

笑顔で渡す。

「ああ」

ひょいっとあたしからジュースとタオルを受けとる。



「しぃ、」

「ん?なに?」

少し気まずそうにしている。


「大丈夫か?」

あっ…
そういえば、あたし

何も言わずに健ちゃんにしがみついてたんだよね。

やだ!恥ずかしい!!


「あっ、えっとその…」

気まずさに口ごもってしまう。


「何かあったら言えよ?助けてやる」


「健ちゃん…。大丈夫だよ。
さっきはごめんね?ありがとう」


やっぱり、優しいな。
この間までは無視されてたけど、いまは優しい。


「うん。なら良いけど、」

そう言ってコートに戻って行った。



あたしはその後もまたずっと、

1人で大声を出し続けた。

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