先生とわたし
「んっ…は、んんっ」
薄暗い理科準備室の中、響く音はくぐもった声と、衣が擦れる音だけであった。
時計は昼時を指している。
廊下からは時折、賑やかな話声がするが、カーテンが引かれ太陽の光が遮断されたこの部屋には、甘美な雰囲気が漂っていた。
「ちょっと…せんせっ…!
もう時間ないよっ…私まだお昼食べてないんだってば…!」
「いいじゃん、昼飯くらい抜けって。痩せられるぞ」
ばかっ、と、少女は男の胸を拳で叩いた。
はにかんで笑った男は、少女の顎を親指でくいと上げた。
「俺だって時間あるわけじゃないんだぞ?せっかく会えてんのに、柏(かしわ)は冷たいなぁ」
至近距離で見つめられ、柏と呼ばれた少女は固まった。
こういう時、きっと重度に惚れてるのは自分のほうなんだろうなと思う。
証拠に、再び触れた唇を拒否する事が出来ず、必死に応えるだけであった。