インプラント
老人はその姿を見ると納得したようにうなずいた。

錠剤を袋に戻し男に返すと




ため息をついて男に呟くように問いかけた。




「なるほどな。なるほど…シャッターの前で走りだしたか。

あのシャッターの前で…




わかったぞ。話はわかった。

あんたの彼女は疲れていた。すべてに疲れていたんじゃ。




そしてこう思っていたに違いない」




老人は男の目から視線をそらさない。




「生きるのがつらくて仕方がないとな」

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