インプラント
光景
「わしは何も知らん」



男が口を開くより早く

老人がつれない言葉を吐いた。




「わしは何も知らん。しかし…」




老人は薬局の天井を見上げた。

天井にぶら下がった時代遅れの装飾が

老人の侘しさをさらに加速させる。




男はすがるような目つきで老人を見る。



「あんたの彼女の気持ちになってみることじゃ。

彼女の気持ちになってみれば




おのずと行き先も分かる」




「気持ちって…」




「さあ、もう出て行ってくれ。

わしは忙しいんじゃ」

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