半熟cherryⅡ
『とりあえず、鍵返して。
…仕事辞めたくないデショ?』
リビングに戻るなり。
後ろについてきた杉原に左手を突き出した。
「これは俺の鍵だ」
“俺の”じゃなくて。
勝手に合鍵作ったんだろーが。
『…あっそ。ならいいデス。
…茜、ケーサツに電話して』
杉原の後ろを歩いてリビングに入ってきた茜に。
ケータイをポン、と投げた。
「はッ?!お前、何言って…」
さっき茜が“警察呼ぶ”って言ったトキは。
全然話し聞いてなかったのに。
今度はなに焦ってんの?
…自分がやったコト、デショ…?
『この部屋の鍵持ってるし。
玄関で“帰れ”って言ったの、俺ら以外の誰かしらが聞いてる。
声、デカかったしね。
それなのにアンタは部屋の中にいる。
さてなぜでしょう?
…状況からいって。
コレって立派な不法侵入、デスよね?』