半熟cherryⅡ
『鍵、返してもらったし。
…夜も遅いから帰ったほうがいいデスよ?杉原センセー』
テーブルに置きっぱなしになっていたコーヒーを飲み干した。
「なんで俺が帰らなきゃならない!!」
『茜に“帰れ”って言われてませんデシタ?』
「…俺は茜が寂しがってるだろうと…」
『んなワケないデショ?
寂しかったら“帰れ”なんて言いませんよ』
……おいおい。
どんだけこのヒト頭沸いちゃってんだ。
その時。
茜が静かに口を開いた。
「…杉原先生。帰ってください」
「話なら学校で聞きますから、帰ってください」
顔は真っ直ぐ杉原の方に向いていて。
下に下ろした手には“ギュッ”と握りこぶしを作っている。
「…逢沢」
茜の方を向いていた杉原が振り返る。
そして。
眉間にシワを寄せ。
俺にだけ聞こえるくらいの小さな声で言った。
「覚悟しとけよ」