半熟cherryⅡ
「今日逢沢クンが授業中に保健室に来たじゃない?
あの少し前にね…」
「か、一美ッ?!」
一美センセイが発した言葉を。
焦って遮った茜。
『……なに焦ってんの?』
「あ、あ、焦ってないッ!!」
…いやいや。
充分焦ってマスよって。
そんな茜と俺を横目で見ながら。
「…ん〜…、でも私から言う話じゃないか」
そう言って。
一美センセイは椅子から立ち上がって白衣を脱ぎ始めた。
「か、一美…?」
茜が恐る恐る一美センセイに声をかけると。
一美センセイはニッコリ笑った。
「そろそろ帰る時間かなって。
桜井クン、帰ろうか?」
「は?俺?」
「…帰るわよ」
「…はい…」
有無を言わさない一美センセイの言葉に。
涼真は若干怯えつつ頷いた。
保健室を出て行く間際。
“クルリ”と一美センセイが振り向いた。
「茜、ちゃんと逢沢クンと話しなさいよ」
さっきまでの作り笑いとは違う。
優しい笑顔を残して一美センセイは出ていった。