♂ vs ♀ ~男女寮戦争~《完》【続編完結】
「…なに泣いてんの?」

少し困った様子で、目を細める瀬戸内。

瀬戸内の顔に、張りつめていた気持ちがゆるむ。



「別に、あんたになぐさめてほしいわけじゃないし」

瀬戸内から、目をそらしてつぶやくあたし。

「素直じゃないんだから…」

瀬戸内はまっすぐ歩いてきて、あたしの正面に立つ。



「…あたし、泣いてなんかないし」

手の甲で涙をぬぐって、顔をそむける。



「無理すんな…」

瀬戸内は、あたしの額にふわっと右手を乗せた。

瀬戸内の優しい手に、余計泣きそうになってしまう。

あたしは、何度もまばたきして涙をこらえる。
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